ケネディを暗殺した弾丸 NHKBS「コールド・ケース”JFK”暗殺の真相に迫る」を見て


CZ75

ケネディが暗殺されてから50年経つそうで、それに絡めたテレビ番組がNHKのBSで連続放映されていたので録画してみました。
全部で8回分もあるので、全部はまだ見ていないのですが、「コールド・ケース”JFK”暗殺の真相に迫る」という1時間の番組はみました。
JFK暗殺の真相に興味があるので。

ケネディ暗殺は公式的には、オズワルドの単独犯行となっておりますが、オズワルドも暗殺されてしまったこと、状況証拠からしてオズワルドの単独犯行説には無理があることなどが言われており、単独犯行説を導き出したウォーレン委員会に対する不審からも、実は実行犯は複数のプロによって行われており、オズワルドは単なるオトリではないかとは前々から言われてきたことです。
その辺りを詳しくまとめた映画、オリバーストーンの「JFK」があるので、それを見ると単独犯行説はかなり厳しい説明なのではないかと思えてきます。

単独犯行説に疑義が出てくる理由としては、

  • 暗殺に使用されたとされるカルカノ銃はボルトアクションで、短時間に3発もの弾丸を発射するのは難しい
  • 1発の弾丸でJFKとコナリー知事の2人に重傷を与えているがそれは可能なのか(魔法の弾丸)
  • しかも、その2名に重傷を負わせた弾丸にはほとんど変形のあとが見られない
  • ザプルダーフィルムに撮されているJFKの最期は明らかに前方から弾丸が命中したことを示しているのではないか(JFKの頭の前方から脳漿が飛び散り、JFKが後方にはじけるように倒れ込むため)

があり、明らかにオズワルドがJFKの後方に位置する教科書倉庫の6階から暗殺を実行したということに対して疑問が呈されてきたわけです。

この番組では、主に、暗殺に使用された銃の解析とその銃によって生じたJFKとコナリー知事の傷跡からJFKの暗殺の真相に迫るものとなっています。つまり、どのように殺害されたかを科学的に追うことで、どこからどのように撃たれたのかを明らかにするという構成になっています。

殺害に使われた銃とその弾丸の特性からわかったこと

カルカノ銃に使われる6.5mmの弾丸はフルメタルジャケットで、かつラウンドノーズ状の弾丸形状としており、通常のライフルに用いられるボートテイル状の形をしていない。(先端が丸くなっており、弾体のかなりの部分が銃身に接するようにできている。通常のボートテイル状の弾丸の場合、先端が尖っており、そのため銃身に接する箇所は後方の一部だけになる。そのため、ボートテイル状の弾丸は銃口を出た時点で先端がふらついた状態になっている。しかし、カルカノ銃の弾丸は、銃身に接する部分が長く、ライフリングによる影響を受けやすく銃口を出た後でも弾丸の先端がふらつくことはない、そのため、直進性が高い)

松の板を使った実験でわかったこと

銃がどれだけの貫通能力を持つかは、弾丸の形状と弾丸が銃口を抜けたときにどれだけのエネルギーを得ているか(初活力)によってきまる。
しかし、実際にどれくらいの威力を持つものなのかは、何かしらの物体に当ててみて、どれだけ食い込んだなどの物理的な結果を見るしかない。
番組の中では、松の板を何枚か重ね、松の板を何枚貫通したかで、おおよその弾丸の威力が推定できる。
実験では2名の身体を貫通するだけの威力があるということが実証された。

人体を模したゼラチンとグリセリン(簡単に言うと石けん)の実験でわかったこと

結果としては、体内で弾丸は非常に安定した弾道を描くことが判明していた。
おそらく、弾丸の形状(細長く、先端が丸い)とその特性から来るライフリング効果によって直進性がはっきりと出ていたものだと思われる。
しかし、実験の結果わかったのは、人体を弾丸がまっすぐ抜けると、必ず弾丸が横倒しになるという現象。
通常のボートテイル型の弾丸では、先端に小さな穴が空いており、それが、弾丸のエネルギーを人体に伝えると共に、先端部の揺れが人体に弾丸が突入した際に大きくなり、弾丸が身体の中で曲がることもある。しかし、カルカノ銃で使われている弾丸は、形状から直進性が高く、それは人体の中でも損なわれない。
だが、人体を抜けて出た後には横倒しになってしまう。

以上の実験からわかったこと

カルカノ銃でJFKとコナリー知事の両名に重傷を負わせることは可能だったという結論で、物証を見ても何ら不自然な点はないと言う見解だった。
後日発見された弾丸は横からの圧力で変形して、中の鉛が一部飛び出ており、コナリー知事の腕から微量の鉛が検出されていると言う事実、コナリー知事の入射口(弾丸の入り口の傷)の大きさからも、JFKの首を貫通した弾丸が横倒しになった状態でコナリー知事に命中したと考えれば説明がつくこと、そこで変形した弾丸の鉛の一部が、知事の手首に弾丸が当たったときに抜け出たものと考えれば不自然ではないと説明されていた。

つまり、JFKとコナリー知事の両名に1発の弾丸で重傷を負わせるのは不可能ではないと科学的に立証された、と番組内では説明されていた。

では、致命傷となった頭部への銃撃はどこからなされたものか?

弾丸による頭部の破損状況の科学的説明

アメリカにはいろんな専門家がいるもので、銃弾が人体に与える影響について研究している医者の見解が示されていた。JFK暗殺事件の場合、実は多くの法医学的な証拠が失われてしまっていた。
なぜなら、JFKの遺体を解剖したのは、法医学的な見地から解剖できる医者ではなく、海軍基地の軍医によって行われていたものだったからだ、そのため法医学的な見地から解剖を行っておらず、なかなか当時の資料から傷口がどういう状況でどういう損傷状況だったのかが不明だった。
そこで、上記の専門家が、特別な許可を得て、様々な物的証拠を洗い直し傷の状態から弾丸がどこから進入したのかを明らかにしていた。
弾丸が頭蓋骨に命中すると、入射口から放射線状に亀裂が走り、その亀裂を繋ぐように垂直の亀裂が走るということが知られているが、JFKの頭蓋骨のレントゲン写真からは、入射口が頭部の後ろにあることが判明した。
そして、右脳が激しく損傷していることがわかり、このことからも、入射口が右前方ではないという結果が得られた。何故ならば、もし、弾丸が右前方から命中していれば、入射口付近の脳は吹き飛ばず、射出口付近つまり左後方付近の脳が激しく損傷するはずだからである。しかし、JFKの脳の左側はほぼ無傷であり、つまり、弾丸は頭部の後ろ、やや右よりに命中していることが判明した。
しかも、入射口は当初ウォーレン委員会で考えられたものよりも低い弾道であることもまた判明している。

弾道学者の見解

争点のもとになったザプルーダーフィルムに映し出されていたJFKが後ろに倒れ込むということに対する説明として、脳に弾丸が命中すると脳の圧力が一気に高まり、首から下の神経を一気に刺激する、体中の神経が刺激され、硬直状態になると、腹筋よりも背筋の方がより力が強いため、一瞬からだがのけぞったようになる。
という見解であり、後方から弾丸が頭部に命中しても場合によっては、後方へ倒れ込むような動きを見せても何ら不審な点はない、と言うことだった。
しかし、入射口の弾道はやはり低いはずだという上記の医者の見解と一致していた。

上記の実験などからわかったこと

  • 3発の弾丸でも、JFKとコナリー知事に重傷を与えられ、しかもJFKの頭部に弾丸を命中させるのは可能であった
  • 様々な物的証拠から最期の致命傷となった頭部への弾丸は後方から発射されたものであった
  • しかし、弾道は教科書倉庫6階よりも低い所から発射されたものである

ここからが本番です

さて、ここからが本番なのだが、番組の中ではココまでしか言及されていなかった、つまり以前から疑惑の的であった、右前方のグラシーノールという小高い丘から発射された弾丸が最期の致命傷となったのではないかという疑惑を暗に否定する形となっていたのであるが、追求はここまで。
しかし、医者と弾道学者が言っているように、弾丸は教科書倉庫の6階から放たれたものではなく、もっと低い位置から放たれたものだという見解は、暗に共謀があったことを認めていると言えよう。
なぜなら、JFKとコナリー知事を負傷させた弾丸は教科書倉庫の6階から放たれたと考えないと弾道的におかしいし、JFKに致命傷を与えた弾丸はそれよりも低い位置から発射されたものと考えないとおかしいとなれば、銃は2丁存在したことになる。ということは、複数の人間が相当の殺意を持って、ほぼ同時に射撃を行っていたということになる。これが共謀と呼ばずしてなんと呼ぶのだろうか。
番組の中では、何故かあえて、ほのめかす程度でそれ以上の言及をさけていたが、これは、カルカノ銃が手動のボルトアクションライフルで、それほど速い速度で次々と弾丸を発射することができない事実からも導き出せる。
カルカノ銃は弾丸を発射する毎に、槓桿と呼ばれるレバーを操作して、空薬莢の排出と次弾の装填作業を行わなくてはならない。この作業を行いながらスコープで移動目標を追いつつ、10秒ほどの間に3発発射するのは誰にもできない作業なのだ。実際、その後の再現実験で誰もこのスピードでカルカノ銃を撃つことができなかった。
銃の扱いに慣れたものであろうとも。

つまり、科学的見地からみたら、2丁のカルカノを使いできうる限り発砲するという方法をとれば、10秒ほどで3発発砲するのは不可能ではない。
と言うことは、狙撃犯は2名以上おり、共謀があったことを裏付けている。
JFK暗殺はやはり共謀によるものだったのだ。

最期に、再現実験についての疑問

カルカノの弾丸が人体から射出されると、必ず横倒しになることはわかった。
しかし、横倒しになった弾丸がどれだけ人体に対する貫通力を持つか、という実験は行われていなかった。
普通に考えれば、横倒しになることで抵抗が増し、弾丸が人体の中で回転し、体内に残る、もしくは射出の弾道が不安定となり一直線にならない可能性が高いのではないか。
実は、上記の実験では、JFKを出た弾丸が横倒しになるということまでは実証されていたが、その後の弾丸の弾道までは実験されていなかった。
ちなみに、JFKの頭部に命中されたとされる弾丸は木っ端みじんとなり、いくつかの破片に分かれているほどなのだ。
JFKののどという比較的人体でも薄い部分を貫通して横倒しになった弾丸とは言え、横倒し状態で人体に再突入したら若干の変形だけでは済まない+弾丸自体の回転運動も手伝って弾道が大きく直線からそれると言うのが通常の見解ではなかろうか。
横倒しになって弾丸が命中した場合、抵抗が激しく大きくなるから、運動エネルギーが人体破壊のエネルギーへと転換されコナリー知事の胸部が吹き飛ぶほどのダメージを与えるものではないのか。

番組の科学的見地は非常になっとくのいくもので、自分も今までグラシーノールからの右前方狙撃を信じていたが、それが否定されて正直驚いている。

しかし、1発の弾丸によりJFKとコナリー知事の両名が負傷したことについては若干疑問に思っている。

もしかしたら、狙撃犯はもっと多く、実際は3名で、それぞれが1発ずつの射撃だったのかもしれない…

いや、本当に興味深い番組だった。