今年読んだ本で印象的だった3冊の本


世紀の空売り

今年も何冊か読書しました

昨今、日本人の読書離れなど言われているみたいですが、確かにスマホなんかに時間を奪われてなかなか読書に振り向ける時間が無かったりします。
そんな状況でも、スマホをいじるのは止めて、通勤電車内で貪るように読んだ本を3冊紹介します。

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世紀の空売り

何かと最近の金融の世界を疑問視しているマイケル・ルイスですが、この本は若干毛色が異なっています。確かに疑問視していて、多少告発めいた内容になっているのですが、金融市場に存在していたある種のイカサマ(ローンを債権化する手法)によって、大金を得た人たちのことを描いているからです。
つまり、金融市場の不均衡(イカサマ)を見抜いて、その逆に大金を張り、結果的に多額の現金を手に入れるという、ある意味、現代金融のサクセスストーリーとなっているからです。
まぁ、現代金融の世界にはある種のイカサマというか、まやかしを浮き彫りにする姿勢は変わっていないのですが、それによって成功する人もいる(イカサマに乗るのでは無く、逆張りすることで)という、現代金融の矛盾を最終的に成功者として描いているというところがちょっと今までの作品とは違ってますね。
イカサマしていた人たちがみんな大変な目に遭った、というところはキチンとえがいているんですけれどね。

クルスク大戦車戦

最近の近代戦争史本の著者として確固たる地位を築きつつある「山崎雅弘」の最新の文庫本です。
大戦終結後から、第二次世界大戦の独ソ戦の「天王山」と呼ばれ続け、様々な研究者が扱ってきた題材を、近年発掘されたソ連側の資料などを元に、改めてその「意味」を問うてみたかなり意欲的な作品です。
様々な歴史家・研究者に語り尽くされてきた題材を扱うって、かなり勇気のいることだと思うんですよね。
出てくる結果が、過去のものと一緒になってしまうか、無理に大胆さを追求してしまい凡作になってしまうか、はたまた歴史研究に一石を投じる内容になるか、かなりきわどい「賭け」だから。
しかし、この著作は、今まで読んだ「クルスク大戦車戦」を扱ったものの中で一番エキサイティングでした。
もちろん、過去の歴史家・研究者の著作の帰結を知っているので、新たな観点で「クルスク大戦車戦」を見せてくれたことに対してエキサイティングさを感じた訳なので、いきなりこの書物に当たる人は「こんなもんか」って思うかもしれませんが、自分としては本当にエキサイティングな体験でした。
「山崎雅弘」氏は、作品をエンターテイメントというよりかは、あくまで資料に基づく文章の連なりとして記述していくので、論文のような文章なので、人によっては堅苦しく感じるかもしれませんが、自分としてはこちらの方が逆に事実性がキチンと伝わるので、好きですね。

シュガーローフの戦い

太平洋戦争中での沖縄戦、その中でも「シュガーローフの戦い」について焦点を当てたドキュメンタリー作品です。
この手の作品は必ず、勝者である、アメリカ軍の側からの視点で書かれていますが、この作品もその視点です。
それには理由として、決して、勝者が自分達を賛美したいからそうなっているわけでは無く、(おそらく)この戦いで生き残った日本側の兵士を見つけることができなかったから、であると思われます。
太平洋戦争は、ガダルカナルの戦い以降、一方的にアメリカ軍に押されて行ってしまったというイメージを受けがちですが、日本も負けず、硫黄島の戦い以降はアメリカ軍並みの合理性のある戦い方をしてアメリカ軍に多大な損害をあたえるということをしています。
そのため、この著作は、勝者のアメリカ側の視点で描かれてはいますが、シュガーローフで戦った日本軍の合理的な戦いに驚嘆すると共に、その戦いに身を投じたアメリカ側の兵士がいかに戦闘に手こずり、恐怖し、それでも勇敢に戦った姿が描かれていて、勝者側から見たの戦史ものとしては結構生々しい作品となっています。
この本は、本当に貪るように読みました。
この本のように、決して大きな戦闘や戦闘の大局を叙述した本では無く、キチンと人間そのものに迫るような戦史の本はそれほど絶対数が多いわけでは無いので、人間の本姓的な部分を見る上でも、戦闘の細かいテクニカルな部分をフォローする上でも非常に重要な本であると思います。
この本は、戦史が好きな人には是非オススメしたいですね。

まとめ

3冊見たら、全部ドキュメンタリーでした。
そういえば小説って、ほとんど読んでないやw